続・「終活」考。

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「端午の節句」前日の5月4日は、父親が85歳になんなんとする日である。
そして時同じくして、母親の祥月命日なのだった。
母親が逝って、早3年の春秋が流れた。
まことに「白馬が眼前を駆け抜けて行くが如く(『親鸞聖人正明伝』にあるフレーズ)」、
あっという間である。年々、毎日が目まぐるしく過ぎ去る感がある。

母親が亡くなった時、父親はその《死》そのものに、
「人生における最高の《美》を感じた」と言った。
我々は生物学的な《死》を以て、浄土教が説くところの「往生」と捉える。
真宗寺院に生まれた父親ではあったが、
ゲージツ家の父親にはそんな「往生」という概念は希薄かと思われるし、
《往生=美》というものではない。
ただ、父親には《滅び行くものの美》という思いが、激しく込み上げていたのだと思う。
それは無常観という、日本人の美意識のようなものであろうし、
父親なりの連れ合いである母親の《死》に対するオマージュなのだと私は考えている。

ところで近時、《終活》がブームである。
スマホの漢字変換でも、「就活」と「終活」が並んで表示される。
正直なところ、世間に見る「終活」に宗教的な色彩は感じられないし、
むしろ自分本位といおうか、面白おかしくといおうか、
《死》そのものに対する尊厳が全く感じられない。
そして宗教サイドが、そうしたおかしな流れに同調しているようにさえ見えなくもない。

全てがそうだとは言わないが、
葬儀業界が宗教の領域にまで席巻してしまったことも、
原因の一端を占めるのではなかろうか。
正直なところ、葬儀業界と宗教界の共存共栄(?)みたいなことは感じられない。
むしろ宗教サイドは、極めて隷属的である。

もっとも《死》の受け止め方も儀礼の在り方も、時代によって変遷するのは否めない。
果たして、葬儀社が高らかに謳う「営業品目」も、「無宗教葬」から「直葬」までさまざまである。
「家族葬」という、曖昧模糊とした「商品」も今や市民権を得たか。
「無宗教葬」は言わずもがな、宗教が介入する余地はない。
「直葬」もそれに近しいが、まだ介入できる余地はあるとはいえ、
私は葬儀業界が宗教界と共存共栄な関係ではないと考える所以の一つである。

《終活》にしても、宗教が置き去りにされたところで盛り上がっているような気がしてならない。
いつぞや報道番組を見ていて、さまざまに驚かずにおれなかったことがある。
必死に断捨離をする人、あるいは生前に棺桶を購入する人などである。
そこには、宗教的思考が見えてこない。
葬儀業界主導の、商業ベースに乗せられているだけのように見えて仕方がない。
つまり《死》の尊厳とでもいおうか、父親が言わんとする美意識など微塵も感じられないのである。

思えば、かつて惠心僧都が『六道講式』を著し、
「二十五三昧」の念仏結社を組織したことは、
まさに今風な言葉でいうならば《終活》そのものであった。
あるいは中世に流行った、現在も摂津平野の大念仏寺に伝わる『万部おねり』や、
大和・当麻寺の『迎講(むかえこう)』もまた、然りである。
「現前仏立」する仏菩薩の姿を見る疑似体験を通して、
人生の先にある《死》に対して、深く思いを致すよすがとしたい。

私にしてみれば、仏法を聞いて「今を生きる」ことそのもが《終活》ではないかと考えている。
確かに、現実的な準備は不可欠である。
しかし《終活》をめぐるイベント(?)の陳腐さには、
何かが違う言葉にならない違和感を覚える。


ことに母親の「往生」を以て、いよいよその思いを強くしている……。



























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■「終活」考。


■写真■
京都市中京区木屋町通押小路の高瀬川一之船入にて、2019年4月16日撮影。
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コメント

ぴあの♪

No title
お父様の思いやお言葉自体に美しさを感じます。
「今を生きる」「切に生きる」ことの大切さ、真摯な姿は崇高です。
頭ではわかっていながら、そうすることの難しさを実感します。
なんだか、トホホな生き方・過ごし方に情けなさも感じながら、なるようにしかならないという諦めとケセラセラの明るさを織り交ぜながら日々を送ることができれば良しとします。
人生は「しゃぁないな~」ということかな(^-^)

houzan

No title
ご無沙汰いたしております。お元気でお過ごしのようでなによりです。
終活についてのご高察はは、まったくもっておっしゃる通ります。しかし、私などの実生活に、仏教が無縁に近いものになっている現実があります。縁者がなくなった時、さて葬儀はどうしよう…と慌てふためく現実があります。そんな心に入り込んでいるのがこの「終活」といったものなんでしょう。

ところでこの「備忘録」いかがされますでしょうか?私もまだ決めかねていますが、古い記事だけはとりあえずFC2ブログに移行しました。ここだけは20コメント限りですが、コメントも移せます。広告も控えめです。私はFC2ブログかアメブロに移行しようと思っています。またどこかでお会いできるといいのですが…。

Rev.Ren'oh

No title
> ぴあの♪さん

しばらくです…。私とて、日常は全く崇高に生きている訳でもなく、全く体たらくな日暮らしです(滝汗)。今時終活を眺めていると、一番大事なものを置き去りにして盛り上がっているような気がしてなりません。葬儀社のくだらない商業ベースに載せられたセミナーを受けるくらいなら、お寺でボーッと過ごすことの方が、格段にマシだということが言いたかったりする私です(^^;)

Rev.Ren'oh

No title
> houzanさん

すっかり御無沙汰しております。その後もお変わりありませんでしょうか。駄文を御高覧頂き、恐悦至極であります♪♪。子供や孫に面倒かけたくないからという発想も、一見ごもっとものようには感じられますが、私に言わせれば詭弁ですね。だったら人里離れた山奥か大海原のど真ん中でどうぞ、と思ったりします。要するに、残された者が気の済むようにすれば良いのだと思います。このように言ってしまうと殺伐とした感がありますが、こうした一連の流れの中に、宗教性が失われるから殺伐とするだけなのだと思います。一抹の宗教性があれば、全く殺伐さは消えると信じて止みません。

ブログの引っ越し、どうしようか……と思案していますが、ヤブログに最も環境が近しいものにとは考えたりしていますが、さてさて…。FC2ブログ、使いやすいですか?。とにかく、書庫ごとごっそり移りたいので…(^^)

jyosyoji

No title
Ren'oh様
ごもっともです。あまりにも、迷惑をかけたくないという意識は、平常時に何を成したか!によると思います。
そのことより、自分の生き方が問われているように思えます。私は、寺の為に精いっぱい尽くして死んでいきたいと思っています。合掌

Rev.Ren'oh

No title
> jyosyojiさん

大変御無沙汰しております。返信がすっかり遅くなりまして、申し訳ありませんでした。平常時に何を成したか……、自身のことも含めて、本当にそのように思い当たります。私は宗祖の遺言「両眼閉じなば、賀茂川の魚にあたふべし」という言葉に深く思いを致すばかりの日暮らしです…。

竹光侍2008

新天地
私のスマホだと、コチラの方が読み易いようです(笑)

引き続き宜しくお願い致します_(_^_)_
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プロフィール

namoamidabutsu18

ようこその御来遊、有難うございます。
令和元年8月31日、Yahoo!ブログより移転しました。
……………………………………………………

京都、宗教、今時のこと。そして、好きな酒について…。
心に移りゆく「よしなしごと」を書こうと思う。
あと、しばし撮り溜めた隣国・近江の琵琶湖の写真など…。
要は気ままに更新して参ります。
自身への癒やしはここへ来られる方々のためにも…と思いつつ。

浄土真宗に籍を置く僧侶。
そして自称、第一線(何をそういうのか解らないけど・笑)から遠のいている遁世僧。
宗門からは一応、「布教使」という資格を受けている。
一時期、精力的に出講すれども…今は「遁世」の身(笑)。

生まれも育ちも京都市。
口が達者と言われるけれど、全くそんなんじゃない、口べた。
ただまあ、いろいろ世の中の物事について考えている方だから、
理屈っぽいとは思うけど・苦笑。

僧侶の傍ら、今は京都市内の某マスコミ関係に勤めながら、「二足の草鞋」で生きている。(※2007年5月に退職)
そんな生活に一抹の自己矛盾を感じながら生きているけど、そこが人間のペーソスだと思っている。
仏の慈悲心とは何ぞや?!と、毎日頭のどこかで考えている。

僧侶だが、宗派の慣習で髪の毛あり。
得度式の時は剃髪した。
頭がマジックテープ状態になって、枕にへばりつき、寝にくかった記憶あり。
随分昔の懐かしい思い出。
私服だと僧侶とは判別しにくい。

そんな私は、自分の技量のほどはともかくとして、
ずっと師僧に師事して古儀の聲明(しょうみょう・仏教声楽)を学んでいる。
仏教儀礼というのは一度簡略化してしまうと、元の姿に復元するのは困難だとされている。
そこで師僧のライフワークでもある、簡略化される以前の、本来に戻す作業をお手伝いしつつ、
仏事本来の意味を考究したいと思ってやまない。

そんな私ではありますが、ふと足を止めて何か感じて下さったら、是非足跡残して下さいませ…。
一期一会を有難うございます。m(_ _)m

【気ままな遁世僧 Ren'oh】より    

(2005年拙ブログ開設当時の紹介文です)

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